第33回新島講座は、ペンシルヴァニア大学歴史学教授 Michael W. Zuckerman氏を講師にお迎えし、10月29日(金)に神学館礼拝堂において講演会、続いて11月1日(月)に至誠館会議室において公開セミナーを開催した。
「アメリカの若者」と題した講演会では、アメリカ合衆国の青年期にある若者の現状と世代間関係について論じられた。日本や欧州各国との比較においても示唆に富む内容であった。
Zuckerman教授は、まず、青年期という世代区分は、生物学的特徴のみでなく文化によってもかたち作られるとし、この世代を研究対象とする学問のうえでは、その黎明期であるおよそ1世紀前には葛藤・ストレスの時期であると捉えられていたことに概観したうえで、今では経験的調査結果から、成人期への連続性がより強調されていると述べられた。
しかし、アメリカの歴史を遡ると、現代と同様に、青年期の若者に対する、大人の喪失感や不安が見え、アメリカでは依然として、青年期は対立や敵意といった側面に彩られ、問題視されているという点を指摘したうえで、若者の反抗は一時的な脱線であり、若者の通常の性質とは考えられていないように比較的明確な期待を示されている日本とは違い、アメリカの若者は、大人自身の不安定さを映した、混乱したメッセージを受けているとの考えを示された。
最後に、アメリカにおいては、欧州共同体で見られるような社会的リスクから若者を守る政策や就職への道筋をつけられていない現状を踏まえ、世代間の不安や心配をとりのぞいていくことが、現代の「アメリカの若者」に対する理解を変えうるのではないかとの考えを提起して、講演はしめくくられた。
当日は、一般市民、学生、教職員など約120人が、豊富な事例や歴史的考察を交えたZuckerman教授の講演に熱心に聞き入り、質疑応答も活発に行われ、盛況のうちに講演会を終了した。
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