2012.1.27 第16回同志社国際主義教育講演会を開催しました
1月27日(金)、寒梅館ハーディーホールにおいて、国際日本文化研究センター所長の猪木武徳氏を講師にお迎えし、「大学と人文学教育」の演題で第16回目の同志社国際主義教育講演会を開催した。 猪木氏は、初めに、著書「大学の反省」の中の主な提言内容である、教養教育の見直し、高等教育への私的負担の軽減、教師という職業の再生について、それぞれに解説を加えながら紹介され、今回の講演は、主には第一点目の教養教育の見直しについて講演される旨、説明された。 まず、大学を取り巻く外的条件について、第一に、外国の大学では「競争と評価」のシステムに参入することにより、国家間・大学間の競争が激化している事、さらに日本では、法人化、COE等の競争環境、学長の権限強化や財政の自律化等の影響がある事を指摘され、このような傾向に対しては、日本も高等教育機関を多様化し、グローバル化の趨勢に対応しながらも、長期的な視点からは教養教育を守らなければならないことを述べられた。第二に、デモクラシーという制度は実際的な知識を重んじ、教養を軽視しやすいこと、具体的には、選抜しやすい専門知識の重視、私智の偏重、定型的な知識に重きを置く傾向にあることについて触れられ、この傾向は世界的であるが、日本は特に深刻である旨、紹介された。 次に、教養を語ることの難しさについて触れ、教養という概念を、キケロ、オルテガ、福澤諭吉、アラン、福田恒存の言葉で紹介されると共に、教養の重要性をさらに説かれた。 最後に、人文学と教養の同義性、親和性についてキケロが述べた言葉や今野友信の古典論等を解説し、「人文学教育はわれわれの独立心、日本の地方自治の精神、勇気ある外交姿勢を可能にする。その意味で人文学は善き社会、善き国家の基礎となること」を強調され、人文学教育の重要性を説き、講演を結ばれた。 当日は、一般市民、学生、教職員などが、豊富な事例やご自身の経験を交えた猪木氏の講演に熱心に聞き入り、質疑応答も活発に行われ、盛況のうちに講演会を終了した。 |