第35回新島講座は、パリ政治学院教授のVirginie Guiraudon氏を講師に迎え、11月19日(月)に寒梅館6階大会議室において公開セミナー、続いて11月21日(水)に神学館礼拝堂において講演会を開催した。
“Mobile and diverse: how Europe became a continent of immigration.”と題した講演会では、ヨーロッパが移民大陸になった経緯や理由を流動性と多様性をキーワードに論じられた。
Guiraudon講師はまず、移民には勇気と、創意と、とりわけ希望が必要であり、新しい土地での生活には自分の選んだ道が正しいと思う必要があることを説明され、それは世界中の移民にあてはまるものであり、新島襄も日本を離れるときはそう思っていたであろうと述べられた。
次に、ヨーロッパは移民の大陸であることを紹介され、アメリカ合衆国よりも合法的な移民は多く、2011年には3330万人の外国籍の人がEU27カ国に住んでいて、この割合は全人口の6.6%にあたること、そして、その内2050万人はEU圏外の国籍の人々で、残りの1280万人はEU諸国の国籍を有する人々(EU市民)であることを紹介された。
そして、歴史的な視点からヨーロッパにおいて移民が定住した理由について述べられ、次に、2008年以降にギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペインが直面している経済危機の結果について触れられた。19世紀では典型的な移出(emigration)国家であったアイルランドやイタリア等は、1980年代、経済的に発展し、急激に移入(immigration)国家へと変身したが、現在は経済危機のため、ヨーロッパ外から来た移民は驚くほどのスピードでスペインやアイルランドから去っていることを紹介され、EU市民は自国以外のEUの国で生活することが可能であり、「脱出」は一つの選択肢であることを説明された。そして最後に、移民に関する問題は、短期的な解決策は政治的に行われるものであるが、長期的には、社会経済的な問題も関わってくることを述べられ、講演をしめくくられた。
当日は、一般市民、学生、教職員など約50人が、ヨーロッパの様々な国の事例や歴史的考察を交えたGuiraudon教授の講演に熱心に聞き入り、質疑応答も活発に行われ、盛況のうちに講演会を終了した。 |