2013.10.05 第31回東京新島講座を開催しました
10月5日(土)に、第31回目となる東京新島講座を秋葉原UDXにおいて開催した。昨年度に続き今回も、同志社の教育研究を広く一般にご紹介したいという願いを込め、大学の「キャンパスフェスタin東京」と同時開催(共催)とした。当日は、佐伯順子大学社会学部教授と上田慧大学商学部教授の講演で、延べ約250名の方にご参加をいただいた。 冒頭、大谷総長が東京新島講座を開催する趣旨について説明すると共に、学校法人同志社への平素の支援及び協力に対するお礼を述べた。 講演第1部では、佐伯教授が「新島八重と明治女性たち−ハンサムに生きる−」の演題で講演をされ、まず、明治時代の男女平等の動きについて紹介された。教育の機会均等により男女平等意識が芽生えたこと、娼妓解放令やマリア・ルーズ号事件による「人権」意識が台頭してきたこと、女性雑誌発行による女性啓蒙の機運が高まってきたことを紹介され、また、逆に明治時代後年には女性の社会的主張に対して弾圧があったり、家父長の権限が増大するという、女性の活動が妨げられていく事実も説明された。続けて、このような背景をもとに、新島八重の略歴や新島襄の女性観、新島夫妻と同じ明治期のキリスト教信者の夫妻についても紹介され、八重については生涯自分にできることは何かと問い続けた人生であったと述べられた。次に、日本女性に占める労働者の割合をグラフにより紹介され、日本の男女平等の進捗状況を説明された。最後に、現代社会に対する八重の問いかけとして、女性も男性も生活と生計の責任を均等に分かち合い、どちらかに過度な負担がかからない社会にすることが重要と述べられ、講演を終えられた。 講演第2部では、上田教授が「多国籍企業の世界−企業は地球市民たりうるか−」の演題で講演された。教授は、まず、近年大手の日本企業は、在外生産の比重を高め、急速に「多国籍企業」へと変貌しつつある事、また、世界市場では、国境を越えたM&Aや系列を越えたアメリカ・日本の銀行合併などグローバルな産業と金融の再編成が展開しており、日本においても、海外企業のM&Aやライバル企業を含む国際戦略提携(アライアンス)が顕著になっている事に触れられた。次に、グローバリゼーションの波は、各国の雇用形態にも影響を及ぼし、経済格差の拡大、「スウェットショップ(搾取工場)」の広がりなど、グローバリゼーションがもたらす「光と影」が交錯している点を指摘された。また、多国籍企業の問題として、生産委託などによる経営の分散化が進むに従い、劣悪な労働環境や児童労働・人権侵害・税の空洞化などの諸問題が明るみになっている点を述べられ、ナイキなど途上国の生産委託先でのトラブルが絶えない企業も出て来ているという例も挙げられた。最後に、多国籍企業が世界経済に大きな影響を及ぼしている今日では、企業は、「グローバル企業市民(地球市民)」として、投資先を含む地域社会や自然環境・政治・経済・貿易への社会的責任(CSR)を果たしていく必要がある事を、現地取材の経験を元に説明され、講演を終えられた。 今回は、第1部では2013年のNHK大河ドラマ「八重の桜」のヒロインである八重を対象とした内容であり、第2部では多国籍企業に関する最新の研究紹介が行われ、両講演とも、興味深く聞き入る参加者の姿が多く見られた。
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