第32回東京新島講座は、12月13日に川崎友巳法学部教授と松木啓子グローバル・コミュニケーション学部教授を講師に招き、同志社大学東京オフィスで開催され、約80人の参加があった。
冒頭、大谷實総長が東京新島講座を開催する趣旨について説明すると共に、学校法人同志社への平素の支援及び協力に対する礼を述べた。
講演第1部では、川崎教授から「犯罪と刑罰から読み解く現代社会」と題した講演があった。まず、犯罪は社会を写す鏡であり、刑罰(刑法)は犯罪に対する社会のリアクションであると説明があり、「犯罪から読み解く現代社会」として、戦後日本の刑法犯認知件数の推移、凶悪犯罪の認知件数、主要犯罪の認知件数・発生率の国別比較等のデータにより、現代の方が数値上で治安は良くなっているが、人々は体感としてそれを感じていないことが紹介され、その理由を説明された。続いて、「刑罰から読み解く現代社会」として、罰金や懲役などの現在の日本の刑罰、死刑の言い渡し件数と執行数の推移、過去10年の第1審裁判所における殺人罪終局処理人員の動向等が紹介され、日本の量刑については裁判員裁判導入後も変わらずに抑制的に刑の種類と量が決定されているとの説明があった。刑法改正について、2000年代以降は改正が続いて行われており、それを刑事立法時代の到来としてその内容や意味も含めて説明された。結びに、現代社会は、個人が軽視され、偏狭な利己性が高まり、強者の論理がまかり通る社会になってきたが、それを変える抜本的な方法はなく、日々の教育によって、一人ひとりがその改善に向けて努力することが大切だと述べ、講演を終えられた。
講演第2部では、松木教授から「グローバル化とコミュニケーション―プレーン・イングリッシュをめぐって―」と題した講演があった。まず、英語のグローバル化について、英語を母語として使用する国々、英語を公用語や準公用語として用いる国々、そして、英語をビジネス等必要に応じて用いる国々の3タイプに分けて紹介され、現在は英語が世界的に普及していること、その普及と共に英語が現地化していることを説明された。そして、このような状況下において、どのような英語を使用するのが良いかという問いを出発点に、本題となるプレーン・イングリッシュについて、その内容と歴史が説明された。まず内容については、2010年に成立したアメリカ合衆国のプレーン・ライティング法とそのガイドライン、プレーン・イングリッシュをめぐる大統領令や覚書等が紹介され、その特徴はclarity(明瞭さ)・brevity(簡潔性)・sincerity(誠実)であると結論付けられた。続いて、歴史について17世紀のイギリスの事例として、Thomas SpratやRichard F.Jonesの著書からの事例が紹介された。最後にまとめとして、プレーン・イングリッシュとは、現代においては読み手志向の英語であること、その起源は17世紀イギリスにおける科学コミュニケーションであり、プレーン・イングリッシュが理想とされるのは現代だけではない旨を述べ、講演を終えられた。
気鋭の2人の教授による講演に興味深く聞き入る参加者の姿が多く見られ、両講演終了後には、質疑応答も活発に行われ、講演は閉じられた。
(法人事務室) |
川崎友巳先生の講演の様子
松木啓子先生の講演の様子 |